コラム

インフレに備えるべきか?

デフレはよく聞くと思いますが、インフレはデフレの反対です。

  • デフレ:物価が下がること↓
  • インフレ:物価が上がること↑

このインフレという言葉ですが「預貯金はインフレに弱いから投資した方が良い」と使われたりします。預貯金の金利は低いので、インフレで物の値段が上がると買えるものが減ってしまうという話です。金融関係の営業マンがよく使います。

でも思いません?「ずっとデフレだったじゃん」って。インフレになるのでしょうか?

インフレはオオカミ少年

2017年の消費者物価指数は前年比0.5%の上昇でした。100円の物が100.5円になった、つまり物価はほとんど変わりませんでした。では、昔はどうだったか。

20年どころか30年くらい物価上昇率は低い

※総務省統計局のデータより作成

2014年は消費増税の影響もあり、消費者物価指数は2.7%の上昇でした。これは1991年以来の上昇です。実に20年以上マイナスから2%の間を上下してきたわけで、物価は大して変わりませんでした。更にさかのぼると1983年以降0~2.5%で推移、バブル期さえ3.3%でした。20年どころか30年くらい大して物価は変わらなかったわけです。

インフレリスクは間違いだった

そんな状況でも「預貯金ではインフレに備えられません」と言われ続けてきました。でも、株に投資をしても1987年の日経平均は21,564円、2017年は22,764円(12月終値)と30年間たいして変わらなかったわけです。1980年代の当時、預金に3~4%の金利が付いていたことを考えると(もっとかもしれない)、金利が高かった時期に期間の長い定期預金や国債にするのが一番無駄のない投資でした。

「インフレに備えましょう」というセールストークは、結果として間違っていたと言わざるをえません。

それでもオオカミ(インフレ)は来る?

それでも「インフレになる」と思う人もいるでしょう。先のことは分からないですから。

低インフレは日本だけではない

確かに未来は分かりませんが、興味深いのはインフレ率が低いのは日本だけではないということです(低インフレに関する内閣府のレポートはこちら)。

日本以外の先進国も低いインフレ率になっています。考えられる原因は、

  • グローバル化で安い輸入品が手に入りやすくなった
  • グローバル化と技術革新で賃金が上がりにくくなった
  • インターネットの普及で安い商品を見つけやすくなった

といった事です。安い輸入品が入ってくるので商品の価格は上げにくい。経営者は社員の給料を上げるより海外展開やシステム投資に関心がある。消費者はインターネットで情報を集めているので少しでも安い商品を買う。

構造的に物価も給料も上がりにくくなっている可能性があります。

アベノミクスでも物価はあがらない

日本銀行は黒田総裁になって以降、超積極的な金融緩和が行われました。いわゆるアベノミクスです。金融緩和とは、企業が借金して設備投資しやすくなる→景気が良くなる→給料あがる→物価もあがる、といった変化を狙ったものです。しかし5年たっても物価はあがりません。

公共事業を増やしてカンフル剤的に景気を良くする方法も、国の借金が多いので難しい。この状況で「将来のインフレに備えて」というのは虚しい感じがします。

モンスター(ハイパーインフレ)は来ないか?

モンスター級のインフレをハイパーインフレと言います。日本の戦後直後やドイツ(第一次大戦後)のハイパーインフレが有名です。物の価値が上がるというか、お金の価値が下がるので、一気にジュースが一本10,000円みたいな世界になります。

日本は国の借金が1,000兆円を超えており、いつか日本円の信頼が失われてハイパーインフレになるという人がいます。この可能性はどうでしょうか?

ハイパーインフレになる可能性は低いが・・

国の借金である国債は90%が国内で保有されており、国債の暴落懸念は小さいと言われます。金融機関にしても他に運用手段がないので国債を買うしかない、買い手がいるので国債は大丈夫というわけです。また、貿易などの収支は日本全体で見れば黒字です。ハイパーインフレが近い将来起こる可能性は低いと言えます。

とはいえ、どんどん増える国債残高をみると、本当に大丈夫かと思います。高齢化が進んで国民が買い支えられない日が来るかもしれません。

ハイパーインフレに備えた方が良い?

とはいえ、ハイパーインフレに備えるのは現実的ではありません。

ハイパーインフレはお金の価値が下がるので、預金は紙くずになります。借金して土地を持っているような人は、借金は棒引き状態で土地だけ残ります。株や債券は換金売りで暴落、一方で他国の通貨や金などは相対的に価値があがります。

ハイパーインフレを心配して、借金して土地を買ったり資産を外貨にしたとします。確かに対策になるかもしれませんが、起きるか分からないハイパーインフレのために、円高や土地の価格下落を心配しなくてはなりません。円高や土地の価格下落はハイパーインフレよりも発生可能性が格段に大きいので、この対策は割りに合わないことになります。

結論:インフレを考えて投資する必要はない

低金利なので、預貯金以外に投資リターンを求めるのは良いと思います。ただ、そうではなく「インフレに備えて投資をしなければならない」と思っているなら、冷静になって良いかもしれません。インフレが起こる可能性は必ずしも高くないからです。

投資よりも節約の方がリターンが大きい

今はネットで最安のお店を見つけたり、口コミサイトで安くて美味しい飲食店をみつけたり、スマホを格安スマホにしたり、自分のお金を効率的に使う方法があります。不確実な投資リターンを求めるよりも、ちゃんと調べてお金を使うことで、確実に節約というリターンを得る事ができます。

株式投資のサイトなのに投資を勧めないのはおかしいですが「〇〇に備えて投資しましょう」というセールストークには注意しましょう。実は現金が一番良かった、という結果になるかもしれません。